健気と云うには過酷過ぎて…
『霧の中の風景』
テオ・アンゲロプロス監督(1988年 ギリシャ=仏)
今年の始めにテオ・アンゲロプロス監督が不慮の事故で亡くなってしまったので追悼上映されたうちの一本。見逃していて、ずっと気になっていたけれど、監督の殆どの映画が「霧の中」だったような気がして、そのうち本当に見てないのかどうかも判らなくなってゆき…監督の死で目が覚めて、ようやく見に行った。

父親に会ったことがない姉弟(姉、5年生くらい?弟、5歳くらい?)が母親に聞かされていること【パパはドイツにいる】を頼りにある日、アテネ駅か らドイツ行きの列車に飛び乗って…。
「霧の中」は無謀な旅の途中で出会う青年が道で拾ったフィルムの中の風景(じゃないんだけど…)くらいで、この映画は ずっと鮮明だ。そんなことをすれば当たり前のことが無残にも当たり前に起きてゆき、見ているのが辛くなるけれど、ぼろぼろになっても諦めないふたり(殆ど、姉)から目を放すわけにはゆかない。
リアルに過酷な子供たちとは対照的に、無邪気過ぎる大人たちのシーン(ファンタジック且つ不気味)がいくつか挟まれていて怖い。この感じは他の作品でもほぼ毎度出てきて怖いけど、そこに惹かれてる気がする。寺山(修司)さんの映画みたいに。

さて、酷い大人に自分の躰がお金になると気付かされた姉は、悪いことを覚えて旅を続ける…父親には会えるのか?機会があったら是非ご覧になって、感情を揺すぶられてください***最新作(三部作の三作め)の撮影中に亡くなってしまった監督のご無念と、この映画のラストが繋がっているように想えて怖いです。すべては霧の中…。

[2011.5.13 早稲田松竹にて]

2012年6月5日 記