かなしいのは…?
『父後七日』(邦題:父の初七日)
王育麟(ワン・ユーリン)製作・監督、劉梓潔(エッセイ・リウ)原作・脚本・監督(2009年 台湾)

テレビで9.11の衝撃映像を見てしまうこともなく、その50日前に私の父は亡くなった。偶々だけど、こちらも父親を亡くしてからの物語。主に葬儀に関わった七日間をドキュメンタリー風に綴った映画。

近いけど、よその国。台湾のお葬式(一般的な葬儀と云うわけじゃなくて、いくつかある様式のひとつらしい。)はウチらのとは違っていて興味深い。映画の中にも道士(葬儀の儀式に関わる職業。葬儀屋とはまた別の)に憧れてしまう青年が登場するが、私もさいしょに「かっこいい!」と想った。道士は初めての親の死で勝手のわからぬ子供たち(若いけど、もう大人。)に、どうすればよいかをいちいち的確に促してくれる。いちいち云ってくれないとどうしようもないほど、やることがいっぱいあるのだから。そんな台湾のお葬式ほど面倒くさくはないかも知れないけれど、ウチらのお葬式でもやることがいっぱいあった。 遺族には悲しんでいる暇など与えられない。まぁ、当初私には《怒り》ばかりで《悲しみ》が訪れるのは随分後になってからだったと想うけれど。『父と暮せ ば』(2004)を見て、幽霊でもいいから父に会いたいよ…と想った時かなぁ?

葬儀にまつわること、死んで初めて発覚するいろんなこと、何処も同じなのだなとしみじみ想う。そして、闘病中はあんなに重苦しくて辛かったのに、死んでしまうとふわりと忘れて、普段はもう死んでることを忘れているくらい。そして、時々父を思い出してしまう出来事に遭い、人目も場所も憚らずに泣く。映画の中でもそうだ。父と娘がカラオケで歌う回想シーンで歌っていたのが、父がカラオケ教室で習ってきてウチで練習してた歌だったのには魂げたけど。

湿り気を湛えた台湾独特の美しい風景に毎度のことながら心が揺れます。台湾に興味がない方も、お父様がご健在の方も、是非是非どうぞ***

[2012.3.7 銀座シネパトスにて]

2012年3月9日 記