何が起こっても人は自分のことしか考えられない
『ヒミズ』
園子温監督(2011年 日本)

冒頭に去年の地震と津波でめちゃめちゃになってしまった町が出てきて、否応なしに思い出す。勿論、忘れている筈はないんだけど…。

毎度、劇場予告を見るだけで気分が悪くなってしまい、1作も見てもいないのにずっと嫌いだった監督なので、偶々見た『愛のむきだし』が異常に面白かったからって次からは欠かさず見る!と云うわけもなく、シネ丼の担当さんに促されても、「園子温が苦手だから見ない!」と先週云ったばかりなのに、原作の漫画を知らないから、主役の染谷くんがどうして泥だらけなのかが急に気になって見てしまった。地獄だった。中学生役の主演のふたりはとてもキレイなこころを持っているけれど、共に親が「人でなし」なので捻れた思想を各々が知らず知らずのうちに共有している。やがて、ふたりは追い詰められてゆき…。

震災で、親や借金取りの暴力で、貧困で、世間への得も云われぬ怒りで、人は追い詰められて不安のなかった時には微塵も想いもしなかったとんでもないことをしでかしてしまい、終いには絶望に追い込まれる。然し、そのとんでもないことを平気で生業にしている人もいる。「どうして?」と想う人がいれば、 「何が悪い?」と想う人もいる。世の中は、どうしようもなく「人それぞれ」だ。この映画の配役が見事な適材適所であるように、人はひとりひとり違う。 絶望を絶望で終わらせず、希望に変えることができるヒミズたちもいたりする。

この映画を見た直後に会った友だちが、震災どころではなかったと云う彼女に降りかかった災難を話してくれた。酷い。確かに、本人にしてみたら震災どころじゃない。なので、私はこの映画を見なきゃよかった…と想った。

[2012.1.18 ヒューマントラストシネマ有楽町にて]

2012年1月21日 記