なんとも云えぬ、せつなくてやさしい青
『海洋天堂 OCEAN HEAVEN』(邦題:海洋天堂)
薛暁路(シュエ・シャオルー)監督・脚本(2010年中国)

主人公が病気の映画は「余程のこと」がない限り、まず見ない。「映画を見て泣きたい!」と云う欲求は一切ないから。成人した自閉症の息子とお父さんの物語で、お父さん役を李連杰(ジェット・リー)がアクション抜きでやる!と云われても余計に悲しくて見にゆけない・・・今回の「余程のこと」は、《撮 影:クリストファー・ドイル(杜可風)》でした。

物語は、病で死期が迫ってしまった父親が、自閉症の息子をひとり残してゆくわけにはゆかぬと心中しようとするのだが・・・で始まる、父ちゃん最後の奮闘記。必死の父ちゃんと、呑気(に見える)な息子との対比。息子は息子で、それなりに必死であることの可笑しみ。深刻な状況の筈なのに、辛くはならない。登場人物ひとりひとりの細やかな仕種や科白で何度もホロリとして、結局は勿論、しっかり泣かされてしまうけど、しんみりし過ぎないラスト(脚本)がや さしい***

海が綺麗な町に暮らす主人公の職場が水族館!青がいっぱいの映画を、青に素敵な魔法をかけてしまう杜可風が撮ってると云うだけでも目にきて泣けてしまいそうよ。同じ青が『春光乍洩(ブエノスアイレス)』(こちらも撮影は杜可風)では夏の空だったねぇと思い出してたら、親子の部屋に光の魚がぐるぐる流れる仕掛けの電気スタンドがある!『春光乍洩』の主人公らの部屋では、光の滝の水が流れる電気スタンドがあったけど、何か繋がりが・・・?と想ったら、この映画の編集に『春光乍洩』でも編集をやっている、そもそもは美術さんの張叔平(ウィリアム・チャン)の名前があったから、吃驚♪エンディング曲は周杰倫 (ジェイ・チョウ)だし、初監督作品のあちらこちらにお楽しみが散りばめられた幸運な映画ですよ***偶々、金曜に(シネスイッチ銀座は金曜、女子900 円♪)出先で短か目の映画が1本見られる時間がぽっかりできたことに感謝だわ!この夏に、ぜひご覧ください。

[2011.7.15 シネスイッチ銀座にて]

2011年7月19日 記