全員悪人?
『アウトレイジ』
北野武監督(2010年日本)

ビートたけしが好きなんです。ツービートが現れるまでは、漫才を面白いと想ったこともなかった関西人でした。だから、彼が撮った映画は見ます。面白いです。面白いけど、怖い。震えるほど怖いんです。

たぶん目線。どんなアングルであろうと、寄りでも引きでも、たけしさん本人も他の役者も天上目線で撮られていて、体温がまったく感じられない。どんな物語でも、その目線が同じだから寒い。震えてしまうんです。それが、怖い。『菊次郎の夏』で一瞬地上に降りてきてくれた気がしたんだけどなぁ…。あれだけは、少し温かかった。

『アウトレイジ』は面白いです。悪人なんかひとりも出てきませんよ。欲望に忠実な大人の男子が殺し合いをしているだけで、登場人物の各自は誰ひとりそれを悪いなんて想ってないし、反省もしてない。そんなところに悪人は存在しません。あれ(「全員悪人」)は客寄せの為だけの文句で、内容とは異なります。タイトルは『OUTRAGE』これが正しい。タイトルのまんまの映画です。裏を返せば『無邪気』、そんなタイトルを付けたい物語です。だから“やくざもの” は、いっさい相容れないから見ないんですってば。余程のことがない限り。

血の通ったたけしさんの映画が見てみたいです。それって、世界が認める「北野武の映画」じゃなくなるのかも…?

[2010.11.12 目黒シネマにて]

2010年11月15日 記